ノーズコーンの設計方法 基礎&作図編

理論編

はじめに

ノーズコーンはロケットの構造において,重要な要素のうちの1つです.その形状が変われば,空気抵抗が変わり,モデルロケットの場合であれば到達高度に大きく影響してしまいます.

モデルロケットの製作時など,なんとなくこんな形かな?と職人技で作ることもできますが,
ここでは,前提の基礎知識から理論式を用いる形状の設計方法を解説します.空気力学の深い専門知識までは触れません.あくまで,数式に基づいて,それっぽく製作することを目的としています.

※厳密には速度範囲によって適切な形状は変わります.

↑この記事で設計するノーズコーン形状

前提

製作にはExcel,(+3D CADが使える環境3Dプリンター)があることが前提です.
※作図のみであれば,Excelだけで大丈夫です.

ノーズコーン(nose cone) とは?

日本機械学会では以下のように解説されています.

飛行機やロケットの先端などの前方突起部に設けられた円すい状の空力整形部をノーズコーンという.円すい状にすることによって,よどみ領域を小さくし,空気抵抗を低減している.レーダなどが収納されていることが多い.

一般社団法人 日本機械学会 https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=05:1009861

おおよそ形状は「円錐」であるとされています.ただ,円錐にも色々あるので,どういった形状が良いか以下で解説していきます.

空気抵抗の基礎知識

まず,前提知識として空気抵抗の話をします.
自転車に乗って,速度を上げていくと前からの風が邪魔する向きに力が働きます.この力を専門用語で抗力といいます.抗力は速度の2乗に比例し,投影面積に比例します.
ここでロケットの場合だとノーズコーンの形状を変えると抗力係数が変わります.抗力を小さくするには,速度を遅くする!ロケットの投影面積をを0にする!・・・なんてことはできないので,抗力係数が小さくなるような形状にす必要があるということになります.

考えられる色々な形状

じゃあ,一体どんな形状が良いのか?単純な円錐であれば製作は簡単です.
しかし,実際には先端が丸い方が抗力は小さくなります.手作業で作るのであれば,円錐がベスト?かもしれませんが,3Dプリンタという文明の利器が使える環境等があれば,曲線がある形状も製作できるので,以降の章では,より厳密に数式を用いて,その形状を作図していきます.

フォン・カルマン(VonKarman) の数式を使って作図しよう

 ここでは1つの例としてシアーズ・ハック体と呼ばれる超音速流において理論上抗力が最も低い形状を作図する方法を説明します.※モデルロケットの速度域で最適な形状かどうか分かりませんが,ロマンはあるので作ってみましょう
 その形状は以下のフォン・カルマンの数式を用いることで作図できます.

上の式では,ノーズコーンの断面形状の半分を作図できます.(線対称なので折り返せば良い)
また,ノーズコーンの全長Lと胴体の半径Rが決定していることが前提になるので,まずはその2つの値を決定して下さい.(RとLの比が分かればOKです)

次に,Excelを開いて,以下のように RとLの値を用意し,x,θ,yの列を用意します.
ここでは,R=40,L=100とします.

続いて,A5セルから下に向かって,0から設定したLの値(ここでは100)まで小刻みに増加させながら入力します.※ここでは2ずつ増加させています.細かく刻むほど綺麗に作画できます.

そしたら,いよいよ,θの数式を入力します.ここでは,B5セルに以下の数式を入力して下さい.

=ACOS((1-2*A5/$B$2))

そして,以下のように全てのxに対してθの式を適用します.

同様に,yの数式を入力します.ここでは,C5セルに以下の数式を入力して下さい.
ここでは,C=0(指定された長さと直径に対する最小抗力)で計算しています.

=$A$2/SQRT(PI())*SQRT(B5-SIN(2*B5)/2)

θの時と,同様に,全てのxに対してyの式を適用します.

あとは,xとyでグラフを作成します.
ここで,縦と横の比率を同じにすることがポイントです!

ここでは割愛しますが,これを印刷して手作業でノーズコーンを作る際に用いるのもありですし,CAD上で表示してx軸を中心に回転体をつくれば,3Dプリンタなどで製作できる3Dデータに変換できます!ぜひ挑戦してみてください.

(そのうち,割愛した内容を更新する予定です.2024/4/13)

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