モデルロケットや自作ロケットの点火装置を自作したいという方のために,基本的にホームセンターで買えるもので作れる点火装置の作り方をお教えします.今回は,理論や基礎実験を行います.
最終的に製作するイグナイター
免責事項
本実験を行う際は,周りに燃えやすいものがないか確認し,消火器や消火用の水を準備して,安全に十分配慮して行ってください.この資料は理工学系の学生向けです.学校のグラウンド等の使用許可を得て教員の監督の元で実験を行ってください.決して公園などの公共の場では行わないでください.なお,当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください.詳しくは,本サイトの免責事項・プライバシーポリシーをご一読ください.
電熱線の理論
中学生の理科でも学びますが,電熱線の発熱量Qは抵抗値R,電流値Iの2乗,電圧印加時間tに比例します.
ここで,発熱量Qが大きいほど点火する力が大きいということになります.しかし,実際には印加できる電圧に限界があるなど,制約があるので,実験を通じて適切な値に抵抗値を設計する必要があります.
また,電熱線の抵抗値Rは,以下の式で表されます.
従って,定電圧を印加する場合は,検討すべき設計パラメータとしては直径d,長さLがある.
また,点火させる物質の常温と発火点温度の差ΔT,熱容量c,質量mが分かれば,どれほどの発熱量Qがあれば良いかが計算できる.
必要な材料
実際にホームセンターで以下のような直径が異なる3種類の電熱線を購入してきました.
amazonでも同様なものが販売されています.
ニクロム線 100V-100W https://amzn.to/3V1YboA
ニクロム線 100V-200W https://amzn.to/3AK2ZZ3
ニクロム線 100V-300W https://amzn.to/4fH6Tkk
今回の前提条件
今回は,定電圧DC12Vを印加する前提で設計を行っていきます.
※DC12Vが用意できない場合,9V乾電池でも同様の設計方法で実現できることを確認しています.
※点火回路は別の記事で詳しく解説します.
(参考)スイッチング電源 DC12V https://amzn.to/4eJJkpG
また,今回は,自作ロケットで使用する際に直径6mmチューブに巻き付けるため,チューブへの巻き数ごとの抵抗値や発熱量を計算します.
基礎実験 発熱量の計算
まず,各電熱線の諸々の仕様と理論値,100mmでの抵抗値の実測値を以下に示します.
ここから,各電熱線の単位長さあたりの抵抗値は以下のようになる.
直径6mmチューブに巻き付ける場合,巻き数毎の抵抗値は以下のようになる.
例えば ニクロム線200Wの6回巻にDC12Vを5秒間印加した場合の発熱量は以下のように計算できる.
また,今回の加熱対象物であるチューブがポリプロピレン(PP)の場合,質量5[g](0.005[kg]),発火点温度T=300℃,比熱c=1930J/kg ℃とすると.必要な発熱量Qは以下のように計算できる.
※初期状態は常温環境下の20℃にあるとする.
従って,まだまだ発熱量が足りないことが分かるので,電熱線の直径を小さくするか,通電時間を増加させるか等する必要があることが分かる.
ただし,現実世界では電熱線が細すぎると,通電時間に達する前に電熱線が切れてしまうため,こればかりは理論ではなく,ちょうど良い直径,長さ,電圧印加時間を実験して検証していく方が確実です.
次回は,具体的な点火回路を解説していきます!お楽しみに!(2024/11/23)